リッチーのストラト

  書籍やインターネットの世界では、私の知識などよりもはるかに詳細な情報が豊富に出回っており、本当の”リッチー仕様”を追い求めるならそちらをご覧いただいた方が間違いないと思われますが、あくまでも”私が”追いかけたリッチー仕様についてご紹介します。

 DEEP PURPLE結成時はGibson社の”ES-335″を使用していたリッチーですが、ジミ・ヘンドリクスのステージを観て衝撃を受け、以来Fender社のストラトキャスターを使い始めたという説があります。 以降、時代によって様々なストラトを手にしますが、いくつかの特筆すべき事項があります。

ラージヘッド

 好んで使用していた、というより、”その時代だったから”なのだと思いますが、リッチーのストラトはすべてラージヘッドです(一部の例外あり)。ラージヘッドとはその時代のストラトの仕様によるもので、1965年製~1982年製のストラトキャスターはすべてラージヘッドとなっており、対して、それ以外の年代の物はスモールヘッドと呼ばれています。「ラージヘッドはスモールヘッドよりも高音が強い」といった文献を目にした事がありますが、私にはその違いは解りません。そんな事より、”リッチーのストラトはラージヘッドだから”、私のストラトは当然すべてラージヘッドです(^^♪

一番左がスモールヘッド(知人から借りっぱなしの物)
左の2本がラージヘッド
なお、同じラージヘッドでも年代によってロゴや表記のデカールが異なる

 なお、弦を張ったら余りの部分は切らずに、グルグルとラフに巻いておくのがリッチー流のようです♪

・スキャロップド指板

 これがリッチー仕様を追うなかで一番のポイントかも知れません。シタール(ギターみたいな楽器)からヒントを得たそうで、指板が抉(エグ)られています。これにより、押弦しても指が指板に付かないため、より軽いタッチで音が出せて、感情を込めやすく、より速く弾けるというもの。イングヴェイ等、他にも何人かスキャロップド指板の使い手はいるようですが、リッチーが元祖のようです。ちなみにリッチーのスキャロップド指板は イングヴェイのそれとは違い、各フレット間でもブリッジ側が深く抉られています。 また、高フレットに行くに従い、低弦側は削られていません。これは高フレットの低弦は弾くことが無いためのようです。当然、私のストラトはすべてリッチー流のスキャロップド指板となっています。

ブリッジ側(上から下)へ深く
1弦側が一番深く、6弦側はほとんど削らない

 彫刻等と紙ヤスリで、時間を持て余している学生でもなければ何日も掛けてひたすら削るのです。根気が要ります。最初は弦を張ったらネックが折れてしまうのではないかとおっかなびっくりでしたが、割と大丈夫なものです。リッチーのは削りっぱなしだったようで黒ずんでいますが、私はメイプル指板の物だけはクリアラッカーで塗装しました。なお、リペアショップでも3~4万円程度でスキャロップ加工はやってくれるようです。でも、リッチーも最初は自分で削っていたようですから、ここは是非ご自分で加工しましょう。

・ダミーのセンターPU

 リッチーはストラトを手にして以来、センターPU(ピックアップ)を一切使用しません。実際にセンターPUを使用している写真も映像も見当たりません。そのため、使用しないセンターPUはピッキングの邪魔でしかなく、当初は目いっぱい低く下げていました。この時点で配線もしていなかったのかは定かでありませんが、最終的にはセンターPUを撤去するに至っています。

めいっぱい下げたセンターPU
センターPUは基本的に私も使いません
リッチーが使わないから^^;

では通常、上から「VOLUME、フロントTONE、センターTONE」となっているストラトのコントロールはどうなっているのか。これについては諸説ある中でも、「マスターVOLEME、フロントVOLUME、フロントTONE」となっているというのが有力なようです。一時「MASTER」という刻印のノブが付いている写真も残っています。

上から”MASTER”、”VOLUME”、”TONE”
※一番下に記載の書籍より

 「MASTER」刻印のノブはFenderのSTARCASTER(スターキャスター)というギターに付いていたものらしく、私は運良くネットオークションで入手する事が出来ました。

特定の年代のリッチー仕様を目指すなら必須の”MASTER”ノブ
恐らく今は手に入らない

極太アーム

 ストラトを手にした当初、第二期DEEP PURPLEの頃のリッチーのプレイは激しいアーミングを多用しています。「Speed King」や「Black Night」などが顕著な例。 そのためトレモロアームが頻繁に折れてしまったようです。私も何度か折ってしまった経験がありますが、ストラトのトレモロアームはネジになっており、往々にして折れるのはその根元部分。すると折れたネジ部分はブリッジのメス穴から除去できず、ブリッジごとの交換を余儀なくされます。それを嫌い、より折れにくいよう、より太いアームを使うようになったようです。なお、Ritchiリッチーの極太アームはネジ切りがされておらず、折れてしまってもブリッジから除去できるようになっていたとか。 第三期PURPLE以降はアーミングが減ったためか、極太アームは見られなくなりますが、第二期PURPLE時代のRitchie仕様を目指すなら必須アイテムでしょう。私はネットオークションで、自作している人から購入しました。

大学生の頃、アームを極太に見せたくて
普通のアームにアルミホイルをグルグル巻にしていました^^;

 なお、Rainbow中期以降になると、今後はムーンシェイプといって独特な形をした長めのアームが見受けられます。これは私が大学生当時、”Ritchie Blackmore専門店”と謳った、世田谷桜上水の”Rainbow”というバイク屋さんで販売しており、当然購入しました。が、すぐに折ってしまったのでした。。

ジャンボフレット

 ストラトを手にする以前、GibsonのES-335を使用していたためか、リッチーはストラトのノーマルフレットからジャンボフレットに交換していたようです。FenderのフレットはGibsonのフレットより細く、確かに引っかかる感じがして、Gibsonのギターに慣れているとFenderのギターは弾きづらいのかも知れません。 なお、私は最初からミディアムジャンボフレットが付いているネックを入手したため、自分でフレットを交換した事はありません。

マシンヘッドいろいろ

 マシンヘッド(糸巻、ペグ)は時代によって変遷します。ラージヘッドのストラトには標準で”Fキー”のマシンヘッドが付いていますが、リッチーはストラトを手にした当初からシャーラー製の物に交換していたようです。Fキーのまま使用している画像も見た事がある気がしますが、Rainbow中期くらいまではメインギターにはシャーラーM6を愛用していた模様。それ以降、”リッチー・ブラックモアモデル”としてアイコンとなる、ローズウッドネックとオリンピックホワイトボディにブラックパーツの74年製がメインに昇格するころ、スパーゼル製のトリムロックを愛用し始めます。 私のストラトにはシャーラーM6と、スパーゼルではありませんがシャーラーのロックタイプが付けてあります。

シャラーM6
もともと付いていた”Fキー”のビス孔が見事に残るが、
そんな事は気にしないのがリッチー流

ハイパスフィルター

 ボリュームを絞った時の透き通るような、ハリガネのようなトーンはリッチートーンの魅力の一つ。

 それを可能とするのがハイパスフィルターではないかと言われています。文字通り”高音を通す”フィルターで、ボリュームを絞っても高音だけは絞られないのでハリガネのようなトーンとなる、という代物。私はハンダゴテを使って配線も自分で行うので、割と簡単にできました。コンデンサーをボリュームポッドにくっつけるだけです。 リッチーのそれとは程遠いかも知れませんが、確かにボリュームを絞るとシャキシャキしたトーンになるのは一目瞭然です。

トレモロスプリングの張り方

 ある時からリッチーのトレモロスプリングは決まった張り方となります。5本ある内の、左から2番目だけ抜き、さらにスプリングが掛かっているハンガーをわずかに左に傾けるというもの。これによりアーミングによるチューニングの狂いがバツグンに減るのだとか。ハンガーを傾ける加減など、個体によって最適な角度は違うのでしょうし、私にはその違いが判りませんが、私のストラトもすべて同じ張り方にしているのは言うまでもありません。

ベストな傾き加減は個体によって異なると思われる

 なお、弦の張替えがしやすいよう、スプリングカバーは外したままなのがリッチー流です。

ホームベース型のべっ甲ピック

 本体ではありませんが、これも私は拘った部分。ピックといえば”おにぎり型”と”ティアドロップ型”がポピュラーだと思いますが、リッチーはホームベース型のピックを愛用しています。しかもナイロンではなく”べっ甲”製。 私は大学生当時に前述の”Ritchie Blackmore”専門店で入手しました。一つ1,000円。5つ購入したと記憶していますが、削れたり欠けてしまったり、失くしてしまったりで現在残っているのは二つ。。スキャロップド指板同様、この形に慣れてしまうと他のピックでは弾きづらいと感じます。また、べっ甲製はピッキングのアタック感が独特で、ナイロン製よりもなめらかな感じがします。これもリッチートーンを実現するための大切な要素なのかも知れません。

20年前に入手した貴重なべっ甲ピック

 などなど、以上は大学生の頃からインターネットや書籍から調べてきた内容ですが、これからリッチー仕様のストラトを目指すなら、こちらの書籍がオススメです↓

シンコー・ミュージック「The Guitar Man featuring RB’s Guitars[改訂版]」
2016年7月6日 初版発行 ¥2,200円(税別)
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