
書籍やインターネットの世界では、私の知識などよりもはるかに詳細な情報が豊富に出回っており、本当の”リッチー仕様”を追い求めるならそちらをご覧いただいた方が間違いないと思われますが、あくまでも”私が”追いかけたリッチー仕様についてご紹介します。
DEEP PURPLE結成時はGibson社の”ES-335″を使用していたリッチーですが、ジミ・ヘンドリクスのステージを観て衝撃を受け、以来Fender社のストラトキャスターを使い始めたという説があります。 以降、時代によって様々なストラトを手にしますが、いくつかの特筆すべき事項があります。
ラージヘッド
好んで使用していた、というより、”その時代だったから”なのだと思いますが、リッチーのストラトはすべてラージヘッドです(一部の例外あり)。ラージヘッドとはその時代のストラトの仕様によるもので、1965年製~1981年製のストラトキャスターはすべてラージヘッドとなっており、対して、それ以外の年代の物はスモールヘッドと呼ばれています。「ラージヘッドはスモールヘッドよりも高音が強い」といった文献を目にした事がありますが、私にはその違いは解りません。そんな事より、”リッチーのストラトはラージヘッドだから”、私のストラトは当然すべてラージヘッドです(^^♪

なお、同じラージヘッドでも年代によってロゴや表記のデカールが異なります。
スキャロップド指板
これがリッチー仕様を追うなかで一番のポイントかも知れません。シタール(ギターみたいな楽器)からヒントを得たそうで、指板が抉(エグ)られています。これにより、押弦しても指が指板に付かないため、より軽いタッチで音が出せて、感情を込めやすく、より速く弾けるというもの。イングヴェイ等、他にも何人かスキャロップド指板の使い手はいるようですが、リッチーが元祖のようです。ちなみにリッチーのスキャロップド指板は イングヴェイのそれとは違い、各フレット間でもブリッジ側が深く抉られています。 また、高フレットに行くに従い、低弦側は削られていません。これは高フレットの低弦は弾くことが無いためのようです。当然、私のストラトは市場価値を勘案し削る勇気が無い物を除き^_^;全てリッチー流のスキャロップド指板となっています。
ブリッジ側(上から下)へ深く、かつ1弦側が一番深く、6弦側はほとんど削らない↓


正面から見ると貝殻みたいな形になります↓

彫刻刀と紙ヤスリで、時間を持て余している学生でもなければ何日も掛けてひたすら削るのです。根気が要ります。最初は弦を張ったらネックが折れてしまうのではないかとおっかなびっくりでしたが、割と大丈夫なものです。リッチーのは削りっぱなしだったようで黒ずんでいますが、私はメイプル指板の物だけはクリアラッカーで塗装している物もあります。なお、リペアショップでも3~4万円程度でスキャロップ加工はやってくれるようです。でも、リッチーも最初は自分で削っていたようですから、ここは是非ご自分で加工しましょう。

大人になってからは時間が無いので飛び道具を使うようになり、これなら2時間くらいでカタチになりますが、非常に荒い仕上がり&フレットを傷めるリスク大なのでやはり手彫りが一番です^_^;

ダミーのセンターPU
リッチーはストラトを手にして以来、センターPU(ピックアップ)を一切使用しません。実際にセンターPUを使用している写真も映像も見当たりません。そのため、使用しないセンターPUはピッキングの邪魔でしかなく、当初は目いっぱい低く下げていました。この時点で配線もしていなかったのかは定かでありませんが、最終的にはセンターPUを撤去するに至っています。
目いっぱい下げたセンターPU↓リッチーが使わないから私もセンターPUは使いません^_^;

物によってはセンターPUそのものを付けていません↓

では通常、上から「VOLUME、フロントTONE、センターTONE」となっているストラトのコントロールはどうなっているのか。これについては諸説ある中でも、「マスターVOLEME、フロントVOLUME、フロントTONE」となっているというのが有力なようです。一時「MASTER」という刻印のノブが付いている写真も残っています。

上から”MASTER”、”VOLUME”、”TONE” ※一番下に記載の書籍より
「MASTER」刻印のノブはFenderのSTARCASTER(スターキャスター)というギターに付いていたものらしく、私は学生時に運良くネットオークションで入手する事が出来ました♪

極太アーム
ストラトを手にした当初、第二期DEEP PURPLEの頃のリッチーのプレイは激しいアーミングを多用しています。「Speed King」や「Black Night」などが顕著な例。 そのためトレモロアームが頻繁に折れてしまったようです。私も何度か折ってしまった経験がありますが、ストラトのトレモロアームはネジになっており、往々にして折れるのはその根元部分。すると折れたネジ部分はブリッジのメス穴から除去できず、ブリッジごとの交換を余儀なくされます。それを嫌い、より折れにくいよう、より太いアームを使うようになったようです。なお、リッチーの極太アームはネジ切りがされておらず、折れてしまってもブリッジから除去できるようになっていたとか。 第三期PURPLE以降はアーミングが減ったためか、極太アームは見られなくなりますが、第二期PURPLE時代のRitchie仕様を目指すなら必須アイテムでしょう。私はネットオークションで、自作している人から購入しました。

なお、Rainbow中期以降になると、今度はムーンシェイプといって独特な形をした長めのアームが見受けられます。これは私が大学生当時、”Ritchie Blackmore専門店”と謳った、世田谷桜上水の”Rainbow”というバイク屋さんで販売しており、当然購入しました。が、すぐに折ってしまったのでした。。

ジャンボフレット
ストラトを手にする以前、GibsonのES-335を使用していたためか、リッチーはストラトのノーマルフレットからジャンボフレットに交換していたようです。FenderのフレットはGibsonのフレットより細く、確かに引っかかる感じがして、Gibsonのギターに慣れているとFenderのギターは弾きづらいのかも知れません。 なお、私はフレットに関してはリフレットも擦り合わせもリペアショップにお願いしています^_^;機会があれば挑戦してみようかな。
何本かプロにスキャロップを依頼した際は必ずリフレットもセットで↓

マシンヘッドいろいろ
マシンヘッド(糸巻、ペグ)は時代によって変遷します。ラージヘッドのストラトには標準で”Fキー”のマシンヘッドが付いていますが、リッチーはストラトを手にした当初からシャーラー製の物に交換していたようです。Fキーのまま使用している画像も見た事がある気がしますが、Rainbow中期くらいまではメインギターにはシャーラーM6を愛用していた模様。それ以降、77年製がメインに昇格するころ、スパーゼル製のトリムロックを愛用し始めます。
ちなみに時代的にリッチー愛用のシャーラーM6は”西”ドイツ製の物でMADE IN “W” GERMANYの刻印がある、上下2カ所でビス留めしている”ダブルリグ”と言われる物。稀にネットオークションで出品されているので欲しい方はマメにチェックです!私は見つける度に買い集め、現在ではほとんどのストラトに”ダブルリグ”が付いています♪


スパーゼルのロックペグ↓何色かあるがリッチーのはサテンクローム色

ハイパスフィルター
ボリュームを絞った時の透き通るような、ハリガネのようなトーンはリッチートーンの魅力の一つ。
それを可能とするのがハイパスフィルターではないかと言われています。文字通り”高音を通す”フィルターで、ボリュームを絞っても高音だけは絞られないのでハリガネのようなトーンとなる、という代物。私はハンダゴテを使って配線も自分で行うので、割と簡単にできました。コンデンサーをボリュームポッドにくっつけるだけです。 リッチーのそれとは程遠いかも知れませんが、確かにボリュームを絞るとシャキシャキしたトーンになるのは一目瞭然です。
VOLのインプットとアウトプットに102k程度のコンデンサーを噛ませるだけ↓

・・・と、思っていましたが!!最新(2025年現在)の個人的解釈はこちら↓
ストラトのVOLはいわゆる”GAIN”に近い役割がありますが、上記のようにマスターVolにハイパスを噛ませると歪を抑えたくてVOLを絞った時もシャキシャキになり過ぎてしまう。。そこで、少し上で書いた、MASTER、フロントVOLUME、TONEの配線のうちの、フロントVOLにハイパスを入れたら良くない?と閃いて現在に至ります。

これにより、ハリガネトーンを出したい時はフロントVOLを絞る、そうでない時はMASTERを絞る・・・という事で自己解決に至りました♪
ただし、リッチーのストラトには”マスタートーンサーキット”という謎の特殊な装置が仕込まれているらしく、これが正解かは判りません。。これ以上は謎すぎるので私は手出ししません^_^;
トレモロスプリングの張り方
ある時からリッチーのトレモロスプリングは決まった張り方となります。5本ある内の、左から2番目だけ抜き、さらにスプリングが掛かっているハンガーをわずかに左に傾けるというもの。これによりアーミングによるチューニングの狂いがバツグンに減るのだとか。ハンガーを傾ける加減など、個体によって最適な角度は違うのでしょうし、私にはその違いが判りませんが、私もドンズバなどは同じ張り方にしているのは言うまでもありません。

ベストな傾き加減は個体によって異なると思われる。。なお、弦の張り替えがしやすいよう、バックパネルは外したままなのでリッチー流です。
ホームベース型のべっ甲ピック
本体ではありませんが、これも私は拘った部分。ピックといえば”おにぎり型”と”ティアドロップ型”がポピュラーだと思いますが、リッチーはホームベース型のピックを愛用しています。しかもナイロンではなく”べっ甲”製。 私は大学生当時に前述の”Ritchie Blackmore”専門店で入手しました。一つ1,000円。5つ購入したと記憶していますが、削れたり欠けてしまったり、失くしてしまったりで現在残っているのは二つ。。スキャロップド指板同様、この形に慣れてしまうと他のピックでは弾きづらいと感じます。また、べっ甲製はピッキングのアタック感が独特で、ナイロン製よりもなめらかな感じがします。これもリッチートーンを実現するための大切な要素なのかも知れません。

その後・・・最近(2025年)ではグレコの物をはじめ、この形の物が割とインターネットで購入可能となっています。1.0mmの物や1.2mmの物など厚みも違えば先っぽの角度も違いますが、それぞれ弾いた感触は違います。消耗品にしては高価ですが、いろいろ試してシックリくる物をみつけましょう。
などなど、以上は大学生の頃からインターネットや書籍から調べてきた内容ですが、これからリッチー仕様のストラトを目指すなら、こちらの書籍がオススメです↓
シンコー・ミュージック「The Guitar Man featuring RB’s Guitars[改訂版]」
2016年7月6日 初版発行 ¥2,200円(税別)

